こんにちは、フリーイラストレーターの熊谷ユカ(@kuma_yuka___)です。
最近『また、同じ夢を見ていた』という小説を読みました。
実は5年ほど前にも本書を読んだことがあるのですが(当時非常に感動した覚えがあります)、ふと読み返したくなり、図書館で借りてきちゃいました。
読むのは2回目なので、もちろん話の流れはすでにわかっているのですが、それでもやはり感動しました…!
この記事では、『また、同じ夢を見ていた』の
- かんたんなあらすじ
- 4つの魅力
- 感想
について書いていきます。
本書を読むかどうか迷っている方には「どんな内容なのか?」「面白いのか?」などを参考にしていただいて、本書を読み終えた方とは魅力や感想の共有ができたらいいなと思います。
『また、同じ夢を見ていた』基本情報
はじめに、本書のかんたんな概要についてまとめました。
デビュー作にしてベストセラー、『君の膵臓を食べたい』の著者として有名な住野よるさんの2作目にあたる小説です。
『君の膵臓を食べたい』は実写、アニメともに映画化もされましたよね!
また、週間1万6千部を売り上げ、2016年2月29日付オリコン週間“本”ランキングの総合部門にあたるBOOK部門で9位にランクインしたそうです。
『君の膵臓を食べたい』に引き続き、装画はloundrawさんです。
空気感のあるイラストで、住野よるさんの描く世界観ととてもマッチしていますよね。
loundrawさんのイラストに惹かれてジャケ買いしてしまった方も多いのでは…!
『また、同じ夢を見ていた』かんたんなあらすじ
かんたんなあらすじを紹介していきます。
まずはHPからの引用とPR動画をのせておきますね。
学校に友達がいない“私”が出会ったのは
手首に傷がある“南さん”、とても格好いい“アバズレさん”、
一人暮らしの“おばあちゃん”、そして、尻尾の短い“彼女”だった――
きっと誰にでも「やり直したい」ことがある
引用:双葉社HP
主人公は小学生の「小柳奈ノ花(こやなぎなのか)」ちゃんという女の子です。
一般書で、小学生が主人公の物語はけっこうめずらしいのではないかと思います。
奈ノ香ちゃんは賢くておませな性格なのですが、その性格が裏目に出てしまい(悪く言えば少々高飛車です…)、学校に友達がいません。
しかし、学校の外には「南さん」「アバズレさん」「おばあちゃん」という素敵な3人の友達がおり、学校が終わると3人の友達とそれぞれ一緒に過ごすのがお決まりです。
ある日奈ノ香ちゃんは授業の一環として担任の先生から「幸せとは何か」という宿題を出されます。
そして「幸せとは何か」という難しい問いを、3人の友達の意見を参考にしつつ、自分なりに考えていくのです。
細かく言えば「幸せ」について考えること以外にも物語の中ではいろいろな出来事がおこりますが、簡潔なあらすじとしては、
主人公の奈ノ香ちゃんが「南さん」「アバズレさん」「おばあちゃん」「桐生くん(気弱で絵を描くことが好きな同級生の男の子)」の4人の登場人物との交流を通して「幸せとは何か」について考えていく物語
と言ってOKでしょう。
『また、同じ夢を見ていた』の4つの魅力
それでは、本書の4つの魅力について語っていきます。
ここで紹介するのは私の感じた魅力ですので、ぜひ皆さんが感じた魅力と照らし合わせながら読んでみてください!
魅力1:文章表現
1つ目の魅力は、文章表現です。
『また、同じ夢を見ていた』は小学生の奈ノ香ちゃんを主人公の「私」とする一人称の物語です。
そのため文章全体が奈ノ香ちゃんの
子どもらしい純粋で新鮮な感性
であふれていて、読んでいて飽きません。
一例として、多くの場合あまり注目せずにさらっと読んでしまう「状況描写」ですが、『また同じ夢を見ていた』では状況描写の文章ですらユニークに描かれています。
例えば、奈ノ香ちゃんが「おばあちゃん」の家に向かう道中で、以下のような状況描写がされていました。
「空は太陽さんの光をまんべんなく地球に配っていました(以下略)…晴れることは嬉しいのですが、毎日どんどん暑くなっていて、私は全身から汗を流してひからびてしまうんじゃないかと心配します。おばあちゃんの家までの道が縮んでしまうような魔法を使おうとしたのですが、魔法を使えないことをすぐに思い出しました。」
賢いけれどまだ幼さが残る感性が表現されていて、くすりと笑ってしまいます。
また、ところどころにちりばめられた「言葉遊び」も面白く、思わずにやっとしてしまいます。
以下は奈ノ香ちゃんと「おばあちゃん」との会話です。
奈ノ香ちゃん:「やっぱり人生とはダイエットみたいなものね」
おばあちゃん:「努力が結果に出る?」
奈ノ香ちゃん:「ううん、むちむちじゃちゃんと楽しめないのよ。ファッションも、ジョークも」
おばあちゃん:「なるほど、無知無知か」
そして、なんといっても本書の「薔薇の下で」という最後の一文の表現が素敵でした。
読んだ方は、何のことだかわかりますよね?
魅力2:住野よるさん描く「幸せ」
2つ目は、住野よるさんの描く「幸せ」についてです。
『また、同じ夢を見ていた』では、奈ノ香ちゃんが物語全体を通して、南さんやアバズレさんなどの4人の登場人物とともに「幸せ」について考えていきます。
このように「幸せ」ついて書かれた本は、「人に尽くすことが幸せである」「自分の思うように気ままに生きることが幸せである」…というように、一歩間違えれば「価値観の押しつけ」になってしまうこともあります。
一方『また、同じ夢を見ていた』では、人によって色々な「幸せ」の形があるという立場で物語が展開していました。
なので、先ほど話したような「価値観の押しつけ」が感じられませんでした。
住野よるさん描く「幸せ」を知ったうえで、自分なりの「幸せ」について考えることができるという自然な物語の構成になっていると思います。
非常に風通しの良い物語として、すっきりと読むことができるはずです
魅力3:読む年齢によって物語のとらえ方が変わる
3つ目の魅力は、本書を読む年齢によって、物語のとらえ方が変わることです。
『また、同じ夢を見ていた』には幅広い年代の人物(おそらく10代~80代くらい)が数人登場します。
私たちは今現在の年齢に近い登場人物に寄り添い、感情移入しながら物語を読み進めることができます。
ちなみに私は本書を2回読んだことがあります。
1回目は高校生、2回目はつい最近(現在21歳)です。
本書を1回目に読んだときには「南さん」の気持ちがよくわかりました。
対して2回目…今回読んだときには「アバズレさん」の気持ちが前よりわかるようになりました。
(加えて、主人公の「まっすぐさ」が以前より心に深くささるようになりました)
このように、本書を読む年齢によって感じることや共感できる人物が変わってきます。
(もちろん他の物語にも同じような現象は起こりますが、この本はそれが顕著だと思いました)
魅力4:驚きの結末
4つ目の魅力は「驚きの結末」です。
(以下ネタバレ注意!)
『また、同じ夢を見ていた』は、基本的にどこにでもあるような小学生の日常を描いた淡々とした物語で、驚くポイントなどどこにもないように思えます。
しかし物語の結末を知ったとき、私たちは驚いてしまいます。
それというのも、「南さん」「アバズレさん」「おばあちゃん」、この3人の人物はすべて主人公奈ノ香自身だと知ることになるからです。(勘の良い人は物語の序盤くらいで、「全員同一人物なのかな?」と気がつくはずです)
その後、物語を通して語られてきた奈ノ香ちゃんの小さな冒険ですら「夢オチ」だったという結末です(もちろん実際に幼少期の体験を、大人になった奈ノ香ちゃんが夢に見ていたという解釈になるとは思いますが)。
「また、同じ夢を見ていた」というタイトル回収もさすがでした!
『また、同じ夢を見ていた』感想
とにかく読みやすいです。
難しい言葉を使っていないのに(主人公が小学生なので)、微妙な心情変化がしっかりと伝わってきます。
そして、主人公奈ノ香ちゃんの子どもならではのピュアな感性に何度もハッとさせられます。
読んだ後、まるで自分が新しく生まれ変わったようなすがすがしい気持ちになる物語でした。
好みがわかれると思いますが、個人的には『君の膵臓を食べたい』よりも好きな物語です
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